戸恒東人第八句集『淅瀝』 2014年4月  本阿弥書店

巷の灯の暗さに慣れて朧の夜

同時期に体験したものにはまだ生々しい震災というものを意識した句が随所にあるが、それらが、掲出句のように、日常の一所感という感じで収められている。

菩提子のしきりに落つる風の寺
沖に風出でて潮目の濃き寒暮
裏門に風の死角や梅早し
揺れもどるたびに綻び柳の芽
淅瀝と騒立つ湖畔秋の富士

気になった句を拾ってゆくと、風を見詰めた句になった。どれも、自然の透明な空間が捉えられていて気持ちのいい句だ。そういえばタイトルの『淅瀝』も、雨雪や風の音である。

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