斉田 仁句集『異熟』 2013年2月  西田書店

長梅雨のフランス座から大男
黒南風の部屋のしずかな爆撃機
とうぐわんのとろとろ煮える父の死後
俎の裏も俎秋の暮
カフカより猫背となりて枯野行く
紙袋の鯛焼すこし湿りたる
冬蝶と息子がたまに訪ねてくる

句集名『異熟』とは作者自らのあとがきの弁がある。30年ほどまえに未熟な句集を出した。それで今回の句集を『異熟』としたと。仏教用語である。句集名は作者の含羞が命名させたものだろう。筆太の輪郭を為す言葉が、その言葉の発揮するメージを重ねて深閑とした風景を切り取っている。

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