俳句の秀峰 筆者 藤井みち子
ガラス吹くたびに聳える夏木立 岩淵喜代子 「俳句」9月号
そんなことはあり得ないでしょうと思いつつも、心惹かれて放すことのできない句である。ガラス玉がしなやかに、かつぐいぐいと膨らんでいくとき、夏木立もまた目に見えて伸びていくと言う。
ガラス吹くーー簡単そうに見えていても息の吹き加減はプロにとっても神経を使うところ、いわば、一連の作業のハイライトに違いない。明るい作業場の窓越しに見える緑の夏木立と、熱を扱う工房内の閉ざされた空気。ここは両者の間に呼応を感じている作者がいる。敢て(聳える)とまで言ったことで、読み手には夏木立の丈高い爽やかさが印象に残る。