この作者は第一句集を作った時にすでに俳句の方向を見定めていたのだろうと思う。第一句集「近所」・第二句集「手帖」、そして今回の「呼鈴」,この作者の句集名をたどるだけでも、作者の志向が浮かび上がってくる。
紫陽花や流離にとほき靴の艶
釘の嵩揺すつて減らす日永かな
セロテープ地図に光りし遍路かな
紅梅や雨戸一枚づつ送り
死ぬときは箸置くやうに草の花
ならやいのうすゆき踏める人出かな
末枯や鳥籠に敷く新聞紙
不知火や竹輪工場販売所
諧謔という言葉を思い出す。一句目の遥を想像しながら足元の靴の艶に行き着く。遍路を描くのにセロテープで繕われた地図というのも独特な意外性である。
「俳句は魅了する詩型」を詠み、主宰に魅せられました。
有季定型、韻文、切字を大切に、現代の俳句を目指す明確なコメントに感動した。第三句集「呼鈴」を注文しかしたが、売り切れとか。ますます読みたいので、いつ増版されるか教えて下さい。
それは角川書店でないと、分からないのではないでしょうか。