一切皆空もくもくと毛虫ゆく   岩淵喜代子

『郭公』二月号 俳壇の今    筆者・山上薫

(「俳句」12月号『子規忌』より)
一切皆空。あらゅる現象や存在は実体がなく空である。むずかしい仏教用語も這い進む毛虫には関係のないこと。国際政治とも、金融政策とも、テロリズムとも、難民とも、そして、我が家の買い物リストとも、何の係わりもなく毛虫はゆく。

この融通無碍さはどうだ。毛虫よ、何をどうすればお前のようにもくもくできるのかね。毛虫が答える。わからないよ、おれはただもくもくしているだけだから。もくもくと働くもくもくじゃない。もくもくと煙の立ち昇るもくもくじゃない。ただ、もくもく。俳諧味。ああ、それを言っちゃおしまいだ。もくもくすることだけがもくもくなんだから。もくもくと。ゅく。ゆく。ね。

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