『好日』 2月号より、俳誌月評 筆者・須田眞里子
代表 岩淵喜代子。平成一二年岩淵喜代子が埼玉県で創刊。発行所朝霞市。「同人誌の気概」ということを追求している。
岩淵喜代子作品「余韻の水母」より
一碗の重湯水母のおもさあり
生涯は水母のごとく無口なり
ににん集
我が書架の有限なるや春の塵 木佐梨乃
星の夜の書架万物に見透かされ 木津直人
こほろぎの潜みし書架や方丈記 栗原良子
秘の文書しまふ地下書庫冷まじや 西方来人
書架奥のチャタレイ夫人火取虫 鈴木まさゑ
さざん集
抽斗に釦いつぱい盆の月 尾崎淳子
3Dメロンの網の小宇宙 鬼武孝江
くすり飲む時間となりぬ酔芙蓉 川村研治
揺れ戻す揺れ戻しては吾亦紅 兄部千達
輪郭の鯰となつて泥動く 高橋寛治
遠雷や古木の卓の台湾茶 谷原恵理子
先へ先へ影飛んでいく秋の蝶 浜田はるみ
木佐梨乃氏「英語版奥の細道を読む」、
高橋寛治氏「定型詩の不思議」、
正津勉氏「落丁愚伝」。
秀句鑑賞は岩淵喜代子代表
「ににん反芻」、浜田はるみ氏「十七音の宇宙」。
巻末の「雁の玉章」は、岩淵喜代子代表を含む四氏の個性豊かなエツセイ集である。