鮭の死へ遠い森より鴉くる   中田みなみ

中田みなみ第四句集『桜鯛』 2015年9月 空俳句会より

鮭はかならずかっての故郷へ戻ってくる。小指の先ほどもない稚魚、それが北洋を回遊しながら2~6年で成長したのちに、産卵のために元の川に帰ってくるのだ。そうして産卵を果たすと死んでしまう。言い換えれば死ぬためにもとの川へ上ってくるのである。思えば不思議で健気な行動である。

その死んだ鮭を鴉がつついている光景が一句を成している。近景のその景に、鴉のねぐらになりそうな遥かなる森を引き寄せることで奥行のある風景になった。他に(気まぐれな雨に日の射す青山椒)(人待ちの顔を実梅に移しけり)(梅雨長し見るともなしに街眺め)(配膳車鳴りて西日が眼裏に)など。(岩淵喜代子)

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