サッカーの帰りに花の蔭通る  林 桂

「御岳山公園のひらひら」と題された8句中の一句である。極めて温厚な自然諷詠である。あえてそういうのは、作者が林 桂だからである。ところが、この句を抽出した句集『ことのはひらひら』は四〇近い章から成り立つ作品集。そのすべてのタイトルに「ひらひら」が使われている。たとえば「さよならのひらひら」「ライト感覚のひらひら」「はつなつへのひらひら」というように。この「ひらひら」の使い初めは1985年から始まって現在まで続いていたのである。

当然、後書きは「ひらひら」について書き込んである。しかし、わたしには「ひらひら」はある種の音頭であると同時にオマージュに思える。掲出のタイトルは「御岳山公園のひらひら」は御岳山公園へのオマージュ、「山梨のひらひら」なら山梨のオマージュと解することで、28年の歳月の持続を納得した。
林 桂句集『ことのはひらひら』 2015年  ふらんす堂

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