歯にあたる歯あり蓮は枯れにけり   鴇田智哉

「歯にあたる歯」と言っても寒さで上下の歯がぶつかりあったりしていることを言っているのではない。上下の歯を意識すれば上の歯は下の歯に、そして下の歯は上の歯に触れているのである。無意識の現状をふと意識の上に置いたのである。

視野には蓮の枯れた景が広がっている。その蓮の葉の枯れ様を無残なと言っているわけではない。自然の推移を淡々と享受している作者がいる。

ほとんどが蓬になつてしまひけり
蝉が鳴く傘立てに傘立つたまま
まなうらが赤くて鳥の巣が見える
ハンカチが顔を包んでゐる正午
鳥が目をひらき桜を食べてゐる
いちめんの桜のなかを杖がくる
風船になつている間も目をつむり
まんなかが窪む遅日のひとだかり
七月の舌にかすかな味がする
ある夜の守宮と影をかさねたる
鴇田智哉第二句集『凧と円柱』  2014年9月  ふらんす堂

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