―2014年刊ふらんす堂・句集『向日葵の午後』より―
黒板といえば、黒か濃い緑色のボードが思い出される。何色だったにしても深い色の中にさまざまな想像を託すことが出来る。その黒板にふと渚を感じたのだ。渚ということばが浮かぶときに作者は自ずと詩の入り口に立っているのである。
渚とは川や海や湖の波の打つ寄せているところ。一歩こちらは陸地で一歩向うは海であり川であり湖なのである。生死の境を始めとして、万象の境をも内包していることばとしてその意味は重い。
黒板は丁度作者の視野の遠い距離にあり、その遠さは想念の入り口になる。ふと真向かう黒板の色に海や湖の深さを感じるときに渚が想像されたのだろう。黒板から渚への比喩が水の流れのように夏という季節に行き着いている。(岩淵喜代子)
こんにちは。 私の第一句集「向日葵の午後」より「黒板が遠き渚に見えて夏」を取り上げて頂いて、ありがとうございます。
素晴らしい鑑賞に、一句が輝きだしたように思えます!
お立ち寄りくださいましてありがとうございました。岩淵