『貝の会』2014年8月号 主宰・澤井洋子

俳句四季6月号より   筆者・水間千鶴子

春暁の音に明暗ありにけり   岩淵喜代子
夜から朝へ時はしろじろと移る。朝刊の届く音、水汲む音、鳥の声、始発列車の音…。その音色さまざまに、人それぞれの新しい一日が始まる。(春暁のあまたの瀬音村を出づ  飯田龍太)に通う情景。漢字「聴」が浮かぶ。

お遍路に山のひきよせられてゆく     岩淵喜代子
山がお遍路を引き寄せるのではなく、逆にお遍路が山を引き寄せる、という発想に感銘を受けた。歩く程に魂は浄化され、山の霊気と一体になる。白装束と青い山の対照も際やかに、自然への畏敬の念が伝わる。破調のリズムも心惹かれる。漢字「信」が浮かぶ。

逃水の向こうに道の続きをり   岩淵喜代子
道又道逃げ水また逃げ水、歩けど追いつけど尚遠ざかる。透明な炎よ。漢字「遙」が浮かぶ。(逃げ水を追ふ逃げ水となりしかな。 平井照敏)と同様、不思議な距離感の漂う一句。

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