涼野海音句集『一番線』 2014年   文学の森

会ひしことなき人待てる桜かな
青空は鳥を落とさず植樹祭
短夜の誰もつかはぬ帽子掛
蟻地獄水の明るさありにけり
空蝉と大きな枡の原稿紙
海の日の一番線に待ちゐたる
むつかしき顔して糸瓜棚の下
馬なでし手を洗ひゐる良夜かな

平成23年の第三回石田波郷新人賞受賞者、かつ、今回の句集「一番線」は文学の森の北斗賞に輝いて、句集はそのご褒美とし作られたものではなかと思う。この一番線で思い出すのがハリー・ボッターが魔法の国へ行くために乗るキングス・クロス駅9と3/4番線だ。どうやら俳句の国へゆくには一番線に乗るのかもしれない。

自らが–本集にはおよそ四年かけて自選した句を収めた。私自身の思い入れが深い句を重点的に選んだ。俳句を始めてからずっとただ「自分に正直に」詠んできた。俳人にとってこれ以上、大事なことはないと思う。ーーと語っているように、非常に丁寧に対象と向かい合っている。

コメント / トラックバック1件

  1. 海音 より:

    こんばんわ。私の第一句集「一番線」を紹介して下さり有り難うございました。引用句の中の「なつかしき顔〜糸瓜棚」は「むつかしき顔」に修正して頂けると有り難いです。

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