タイトル同異論については「解題」としてことばが尽くされている。要約すれば、視覚から詠む俳句は同時に複数句が成り立つ、という。ということで、句集の一ページの二句は、臍を一つにしている。二句一章ではなく二句一身の作品群が一集を成している。これはいかにも詩人らしい論である。
鐡をうち春を槌つなり山の人
鐡のごと春は槌たれて耗りゆけり
花人も花も遅れて咲きに来る
花と人遅れて逢ふや枝の尖
ニヒリズム咲かぬ櫻と来ぬ人と
ニヒリズム春の眞裏に花と人
二句一身とは、実際の作品を示してしまったほうがわかり易い。
連作とも違うのである。これも試みの句集である。