西村麒麟句集『鶉』 2013年12月 発行西村家

2009年に第一回の石田波郷新人賞受賞。1983年生れの「古志」所属。
B6版の約80頁の句集には、230句ほどが収まり、目次もまえがきも後書きもない。きわめて淡々と差し出された一集である。
それはまた『鶉』という王道的なタイトルから、その装丁にもいえる。白い表紙に濃紺の見返しのソフトカバー、そこに布目の感触を持つベージュのカバーに鶉というタイトルと名前が金で押印されているのだ。
その本の造りに麒麟さんの俳句への姿勢、そして俳句を続けていくことへの意志のようなものが感じられて好感を抱いた。
かすかなおかしみを底に秘めた視線で掬いとった作品群である。

いくつかは眠れぬ人の秋灯
虫売となつて休んでゐるばかり
秋晴れや会ひたき人に会ひにゆく
海老曲がる母の天ぷら秋の雨
闇汁に闇が育つてしまいけり
いつの間に妻を迎へし案山子かな
猪を追つ払ふ棒ありにけり
卵酒持つて廊下が細長し
冬ごもり鶉に心許しつつ
むかうとはあふみの向かう冬芒
この国の風船をみな解き放て

コメントをどうぞ

トップページ

ににんブログメニュー

HTML convert time: 0.192 sec. Powered by WordPress ME