仲寒蟬句集『巨石文明』  2014年1月 角川書店

栞・櫂未知子 「港」「里」に所属の1957年生れ。

蜂の巣の間取り云々してをりぬ
空港といふ春星の集ふ場所
あめんぼうに是非来てほしい洗面器

一句目の蜂の巣を間取りと置き換える表現、二句目の星がよく見える場所が星が集う場所と置き換わる。3句目はまるであめんぼうに招待状を出すかのようだ。自然と日常のいちまいになった瞬間で俳句を成り立たせている。暗喩のバリエーションである。
その暗喩を感じさせなくなったときに、不思議な空間を掴みとっている。

顔のなき軍服が立つ夏館
人類の太き親指栗を剝く
追羽根のなかなか落ちて来ぬ正午
春の野に広き額を持ち寄りぬ
春昼の入つてみたい座敷牢
人体に表裏ある懐炉かな
巨石文明滅びてのこる冬青空
白靴やどやどやと島踏み荒らす
どのドアーを空けても待つてゐる木枯

コメント / トラックバック1件

  1. 仲 寒蝉 より:

    丁寧にお読み頂きありがとうございました。 寒蝉

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