先日、深夜叢書創立五十周年祝賀会で瀬戸内寂聴さんのご壮健振りに目を見張ったが、今日は85歳のジャンヌ・モロー主演の「クロワッサンで朝食を」を観てきた。この女優の映画を以前に見たのは「デュラス 愛の最終章」だったが、あれから5年くらい経っているだろうか。
老いることに駄々をこねているようなフリーダとかっての恋人だったステフアン。そのステフアンがやっと探したメイドのアンヌ。映画は、ともすれば人生の終焉のべたつきを見せてしまいそうな物語である。それを誇りと自我を持つ、それぞれの人物によって、深遠な人生が紡がれている。
帰りの電車の中で、携帯にメールが入っていた。「ににん」をありがとうというものだったが、そのあとに、体調が回復したので、一緒に麻布本村町へ行ってもいいですよ、と書いてある。以前石鼎評伝を書いているときにお世話になったAさんからだ。この方も大正十四年生まれで、今年九十歳くらいの方である。実は「頂上の石鼎」を書くにあたって、石鼎が神奈川県の二宮に移るまで住んでいた麻布本村町の探索にご一緒していただいた方である。
その後、ある一文から思っていた場所が少しずれているのではないかと、Aさんに手紙を書いておいた。そのとき、手術をしてまだ外出はできないが、回復したらもう一度歩いてみるというお返事を頂いていた。
高齢でもあるし、もうご一緒に歩くの無理ではないかと思っていたので、メールが来たことに吃驚した。本来なら十月にこんな暑い日はないのに、今日は真夏のような気温、それが数日続くという予報が出ている。それで、来週になったら涼しくなりそうなので、また連絡を入れます、というお返事をしておいた。私もすでに後期高齢者だが、それよりはるかに高齢の方たちに元気付けられるような気がしている。