中戸川朝人句集『巨樹巡礼』  2013年 角川書店

ーー巨樹の前に立つと、巨樹の方からの発信が実感出来て、ときに震えるような感動を覚えることがある。--という作者のことばが帯にある。

手をあてし松をはじめの巨樹めぐり

たしかに、あの巨木の幹には不思議な懐かしさを感じるものである。この句集は遺句集になってしまっているが、作者が用意していた句集なので、頁を繰るたびにさまざまな巨樹が立ちはだかる。

彩曳いて新幹線過ぐ椨の花
柏槇の風に発ちゆきヨットの帆
一行を容れ大杉の木下闇

どこをひらいても気持ちのいい巨樹に出合えて、作者中戸川朝人の意欲的な句集への姿勢が感じられる。

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