吟行ー上野界隈ー

第三土曜日は「ににん」の定例吟行日。今回は年末だしー、と渋っていたがやっと先頭立って仕切ってくれる仲間が手を挙げてくれて実行された。森鴎外の『雁」を意識しながら上野界隈を歩き回った。

「雁」の中に出てくる無縁坂の岩崎邸の反対側は、「坂の北側はけちな家が軒を並べていて」とあるように今も小さな家が並んでいる。反対側とのアンバランスも、昔から上野なんだ。
予約してあったイラリアンレストランのランチはパスタに肉か魚のメインデッシュが選べて、しかもサラダとデザートはバイキング。これで1250円は安い。

帰り路を辿りながらの駅までの途中に、いかにも卑猥な感じのポスターの貼ってある映画館を横目で見ながら、「こんな映画館もあるんだ」と言い合いながら路地を抜けきろうとしたときに、原作永井荷風『墨東綺譚」というチラシを配っているのが目についた。

そんな映画も始まるなんて知らなかった、と思いながら、一歩進めようとした足を後ろに戻して「一枚ください」というと、チラシを配っていた初老の男性が「記念にどうぞ」といった。私の前を歩いていた仲間の一人は、3歩ほど後戻りをして「私も」とチラシを受け取った。

チラシを開くこともせずに私は噴き出してしまった。男性の言う言葉に、直前に見た卑猥なポスターを思い出したのだ。仲間も多分そのチラシを見るまでもなく理解したのだ。二人でしばらく笑いが止まらなかった。

男性もまた、場違いなオバサン連が手を出してきて可笑しかっただろう。静かにな声で「記念にどうぞ」と手渡すも気転にも笑えた。手に握ったチラシを見るまでもない。「墨東綺譚」はさっきの映画館で次に上映される案内なのだ。

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