『NHK俳句』1月号

1月9日・1月11日放送 「子供の情景」 筆者・西村和子

   子離れや土筆のはかま陽に焦げて    岩淵喜代子

野の土筆が長けて、その袴が太陽の光に焦げているのを目にした時、子離れを実感したという句です。子育てを体験した人にはこの回路はすぐにつながるでしょう。子供が小さかった頃は、春になると土筆を見つけては摘んだものでした。幼い子にも土筆は見つけやすく、あの可愛いらしい形は子供達に人気です。たくさん摘めた時は、子供といっしょに袴を取り、おひたしを作ったりしたものでした。
 べつに美味しいものとは思いませんが、土筆のおひたしにはそういった経緯も含めた格別な味があるのです。自分自身の子供時代も思い出されます。
 この土筆は、これから摘もうという心は動きません。食べるには伸びすぎ、日を経た土筆です。それより何より、摘む楽しみを分かち合う幼な子が、もうかたわらにはいないのです。母親が子離れを実感するのは、成人式とか卒業式といった特別な儀式の折ではなく、存外こんな日常のちょっとした時なのです。

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