『汀』2012年11月号 主宰・井上弘美

現代俳句私解    筆者 湯口昌彦

夏霞から歩み来てメニュー置く   岩淵喜代子
               (「俳句」九月号)

「ににん」代表。「鹿の背を撫でれば硬し半夏生」から「半夏生」と題する新作12句。掲句は「夏霞」の存在を「メニュー置く」という行為も、それぞれ日常だが、これを「歩み来て」で結んだ結果、非日常を感じさせる句となった。霞は春にたなびくものだが、「夏霞」は遠く見通しがきかないこと。すなわち、「夏霞から」というカオスを提示しておいて、その後の予測困難な状況を「メニュ置く」という卑近にして具体的な行動を提示することにより、不思議に心のどこかを刺激する句に仕上がった。同時掲載の原雅子の「岩淵喜代子小論」は「現実の向うへ」と題し、「箱庭と空を同じくしてゐたり」他を例句に挙げている。

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