『春 川崎展宏全句集』   2012年10月29日 ふらんす堂

 「春」は本来、第七句集目につける句集名ではなかったか誰もが思っていただろう。しかし、遺句集のために句集「冬」以降の作品をまとめ上げることが出来なかったのだ。句集『春』にあたる作品群は、『冬』以後という括り方になっている。一冊には生涯のすべての索引と年譜と解説があり、他に七人ほどの文章の栞がある。一冊というコンパクトなものになった句集はとても有り難い集大成である。

偶然私は「俳句」の9月号の『白雁』特集の〈発刊に寄せて〉という一文に川崎展宏氏について触れた文章を発表したばかりだったので、ここに転載して置くことにするが、展宏氏は苦笑していることだろう。
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 妄執

 句集『白雁』は平成二十年に上梓した『嘘のやう影のやう』に続く第五句集である。
わたしは句集を作るたびに川崎展宏氏を思い出す。氏は酒席の場で幾度も妄執ということばを口にした。何が妄執なのかと言えば句集を作るということに対してなのである。当時、句集を作ることなど念頭に無かったわたしには、そのことばは茫洋とした響きを残すのみだった。  
しかし、酔うたびに繰り返えしていた妄執ということばが、重量感を加えて心中に留まっていったのは確かだった。
振り返ってみると、展宏氏は句集『葛の葉』『義仲』『観音』を、さらに『夏』『秋』『冬』と上梓している。多分次に句集を編めば『春』だった筈だ。今思いかえすと「妄執」は氏自身に向けて叫んでいたのではないかと思う。
 そのことは、川崎展宏氏の句集を作るということについての含羞が言わせることばなのだ。
 私の第一句集『朝の椅子』では、思いっきりの優しさを盛り込んだ栞の文章を書いてくださり、その後の句集もすべてお目に掛けていたが、今度の『白雁』をお届けすることはもう出来ない。
 もう一人の師である原裕氏は、第二句集『螢袋に灯をともす』すら、お目に掛けることができなかった。(2012年9月号「俳句」より転載)
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