榎本享第四句集『おはやう』 2012年10月 角川書店 

ががんぼに給湯室の灯が消され
半裂の顔半裂の尾に添へる
松過ぎの都電が待つてくれにけり
おはやうと言はれて言うて寒きこと
弟の嫁と寿司巻く椋鳥の空
毛糸玉ちひさくなりて転がらず
鉄亜鈴さげて炬燵を出てゆきぬ

最近、波多野爽波という俳人がしきりと気になっている。少し深入りしてみたいと思った矢先にその門下であった「なんぢゃ」主宰の榎本氏から句集が届いた。力まず、あるがままを、あるように写し取った作品が並ぶ。しかも取り合わせが新しい。鉄亜鈴と炬燵が日常的に捉えられていることに瞠目した。

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