『松の花』2012年10月 松尾隆信

現代俳句管見 句集より   筆者斎藤良子

句集『白雁』 岩淵喜代子
 万の人間の一人として万の鳥の一羽を詠む。 等身大の人生から、ユーモアの歩幅とペーソスの歩速で抜け出してはまた、岩淵喜代子は地上の船に還ってくる。(清水哲男 帯文より)

  水無月の平手にあたる馬の胴
  野馬追の武者を差し出す大藁屋
  青鷺の飛び立つときの煙色
  深閑と蓮にぶつかる蓮見舟
  大南瓜椅子に置かれて幾日か

 馬の句が四句野馬追を詠っている。 福島県浜通り北部は旧相馬藩領で、野馬追の神事と祭が行われるが、神事は国の要無形民俗文化財に指定され、東北六大祭の一つにもなっている。現在は神事と祭は分離され別々に行われている。平将門の時代の軍事訓練が元といわれる。

  雁渡し仏も影をつくりけり
  かりがねの夜も一列の藁ぼつち
  水霜や裏表紙へと絵のつづき
  万の鳥帰り一羽の白雁も

 句集名は〈万の鳥帰り一羽の白雁も〉から採用したとある。
 日本には冬鳥として稀に飛来するようだが、嘴と足が桃色、風り羽が黒色の他、青色型も居て、胴体や翼の羽衣が淡々灰色や暗青灰色も居る。

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