好句を探る 筆者 板間恒子
次郎より太郎がさびし桐の花 岩淵喜代子
岩淵喜代子句集「白雁」より。
太郎・次郎と言えばすぐ三好達治の詩が浮かぶ。
大郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ。
次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ。(雪)
この場合の太郎・次郎は、日本のごくありふれた伝来の名前である。太郎の家にも、次郎の家にも音もなく雪が降り積もる。民話風でノスタルジーに溢れている。
掲向の太郎・次郎も子どもの代名詞だが、「より」という助詞によって二人の間には格付けがある。太郎は農家の長男・次郎は次男三男。「家」制度において土地を独占的に相続する太郎。土地から切り離される次郎。しかし「家」制度の崩壊、農村社会の崩壊によって二人の場は逆転したと言えそうだ。家と近代的自我との葛藤に苦しむ太郎。太郎の心象は淡紫の美しい「桐の花」によって際だつ。桐は成長の早い木、材は軽く狂いが少ない木として古くから植栽されてきた。「さびし」という平仮名表記、「び」という濁音も含めて幽かに響く音。太郎・次郎という平凡な二語で今を表現した。
はじめまして
坂間恒子先生の本からこちらへうかがいました。
次男より長男さびし桐の花
年齢を重ねられ、
やはり こどもさんを思う親御さんのお気持ち
あたたかみを感じます。
俳句初心者で なかなか 表現できないこと
多い身ですけれど
一文字 一言葉を大事に読み返し
相手の気持ちがわかるよう
努力したいと思います。
あおやぎ様
お立ちよりくださいましてありがとうございました。