『軸』 2012年7月号 主宰・秋尾 敏

新刊紹介    筆者 表ひろ

句集「白雁」  岩淵喜代子著

今生の蛍は声を持たざりし
鷺消えて紙の折目は戻らざる
登山靴命二つのごと置かれ
月光の届かぬ部屋に寝まるなり
着水の雁一羽づつ闇になる
屏風絵の空は金泥鴨雑炊
葉牡丹として大阪を記憶せり
万の鳥帰り一羽の白雁も
花ミモザ地上の船は錆こぼす
青空のほかは仔猫の三つ巴

■昭和11年東京生まれ。51年「鹿火屋」入会。原裕に師事。後に川崎展宏主宰の「貂」の創刊に参加。平成12年、同人誌「ににん」創刊。現代表。13年「俳句四季」大賞、22年埼玉文芸賞受賞。句集に「朝の椅子」「螢袋に灯をともす」「硝子の仲間」他、エッセイ集、評伝、その他共著多数。日本文藝家協会、日本ペンクラブ、俳人協会、現代俳句協会、国際俳句協会会員。
 本集は308句収める著書の第5句集。句集名は一句に拠る。句集作りは自身を変え、憧れを追う旅。と。

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