岩淵喜代子句集『白雁』鑑賞 蟇目良雨
朝寝して砂漠の端にいるごとし 句集『白雁」より
朝寝の好きな私は夢の中から見て来たものを引きづり出してやろうといつも挑戦するのであるが、さっきまではっきりと見て夢の内容は、目が覚めてしまえば殆んど忘れてしまうものである。たまに戦利品を直ぐにメモしていくつかが私の日記に残っているが実につまらないものが多い。
掲句は作者が朝寝のときの光景を述べているのであるが、明らかに夢の内容に言及したものである。作者はたぶん夢の中で砂漠に遊んだ筈であるが、そうした夢の記憶は定かでなくなり、気がつけば砂漠の端に取り残されていたというのが句の意味であると思う。茫々と曖昧な夢の中身はまさに砂漠の端に居るような、取り残された感じなのである。