榎本好宏著 『風のなまえ』 2012年7月  白水社

著者は昭和12年生れ。「杉」の編集長を18年担当していた。まずはこの「風のなまえ」というタイトルに魅かれる。歳時記にも涅槃西風、貝寄風、東風、彼岸西風、春一番など春だけでも数え切れない風のなまえがある。本書のタイトルから、そんな風がつぎつぎ出て来るのだろうと想像した。もちろん、そうした風のなまえは出て来るが、目次を開くともっと違う物語が盛り込まれていることが察しられる。

春の分類にはまず「蒙古風に運ばれる砂」「大使の忌日に吹く貝寄風」「比良八荒と四高の遭難」……など、興味をそそられることばが続く。夏の「藤原実方と黄雀風」「お風入れと呼ぶ虫干し」「風鈴の音に魅せられて」……なども、単なる風の解説でないのが解る。小文の集積であるから、何処から読み始めてもかまわない。

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