現代俳句文庫―69 『井上弘美句集』 2012年 ふらんす堂

「俳句は型、型以外考えられない」という覚悟を持った作家。それがこの作者の基本となり、背骨でもある。

  六道の辻に金魚の売られけり
  春の風小さな鍋を使ひけり
  ひとの子に手にこぼしやる螢かな
  母の死のととのつてゆく雪の夜
  夜神楽の闇が詰まつて来たりけり
  引鴨をゆすぶつてゐる汀かな
  大いなる夜桜に抱かれにゆく

二物衝撃が俳句の短詩形、ことに俳句を面白くする。踏切を越える金魚、海辺を通る金魚売りなど、やはり金魚売りはその背景にによって生かされる。ここでは六道の辻にいる金魚売り。そこで金魚を買い求める人々が只の人ではなくなるのだ。

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