齋藤眞爾句集『永遠と一日』 2011年 思潮社

平成十三年以降の句を纏めたものだという。大方の俳人が定期的に発表する場を持ちながらの作句だが齋藤氏はそうした場を持たないで一集を成している。齋藤氏の作品を一言で表現するなら「眼底の風景」である。それは以前の句集においてもそうだった。

深山より枕にかよふ鷹一つ
亡きひとと寒の土筆を摘みてゐし
世を離れ住みて身ぬちに真葛原
父母の世のやうに鳥引きをへぬ
門火焚く裏口に立つ見知らぬ子
遠き世を鏡としたり白牡丹
はじめから陸は海なり卯月波
形代も白骨もみな露のいろ
牡丹を離るる旅を終へしごと

句集には蛍、蛍袋、雁が多い。ことに蛍袋の句は韻を踏むかのように幾度も見開き頁の左端に現れる。

それ以後は螢袋の中の母
螢袋の中ならわかりあへるかも
父母未生以前原子炉の螢
螢袋いづこに涙あふれたる
狂ふまで螢袋の中にゐた

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