月刊誌「太陽」は今年10周年祝賀会も済んで、活気に満ち溢れている雑誌だ。その編集長を創刊から手がけている柴田南海子氏の第三句集である。
冬の蝶波に止まりて翔たぬなり
一部始終火蛾の狂ひを玻瑠一重
小鳥来る埴輪の舟に影落とし
片袖を女雛に重ね男雛立つ
作者は俳句を作るときの一番の基本として凝視するということを底流させている。それが、作者の視点を読み手も自ずと辿ることになるのである。
湖上より僧と褒め合ふ比良の雪
白木蓮いま笛吹けばこぞり翔つ
「もういいかい」だあれもいない冬夕焼
凝視に加えた対象の切り取り方、が風景を不思議さに誘う。3句目の冬夕焼けの静寂な世界は惹きこまれる。
半月へ猛る篝火神渡し
「おう、おう」と神へ応へや神迎
大社まで真闇のお練小夜時雨
風に乗る遅参の神よ神在祭
昨夜神の集ひし浜に小貝散る
句集には出雲の神迎え神事での作品群がある。こうした句は素材としては興味をそそられながら、なかなか作品にしにくいものである。ここに柴田氏の底力が集約されたような気がした。