『門』・主宰 鈴木鷹夫  11月号

現代俳句月評    筆者   長 浜 勤

  地獄とは石榴の中のやうなもの  岩淵喜代子  「俳句」九月号

 農家の庭先などに昔からあるものが石榴であろう。晩秋になると、不規則に割れた実から数多の赤い実が現れる。強い個性にひかれて絵筆をとりたくなることがある。中国などでは子孫繁栄を願って植えられたというが日本の場合は実を食べるための目的だろうか。勤務先の学校にも石榴があるが誰に聞いてもこの樹木を植えた理由がわからない。教師の目を盗んで食べる生徒もいるから面白い。中国から日本に伝わったのは十世紀だというが、もう少し早いのかもしれない。
 柘榴の味はその見た目と同じようにくせがある。人肉に似た味がするとも言われる。他人の子を食う鬼子母神は自分の末子を仏に隠されて改心したという話がある。このことから柘榴は子を守る魔除けとしている地域もある。さて、地獄とは柘榴の中というのは、強い言葉の組み合わせだ。地獄の苦しみが一粒づつの柘榴の実であるようにも鑑賞でき、実の割れ方も尋常ではないところに納得した。

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