柿本多映エッセイ集『季の時空へ』 2011年9月 文学の森

 現代に必要な俳人とは柿本多映さんみたいな方だろうと思っている。俳句はもちろんのこと、彼女はいつでもどんなことにでも、真髄を見詰めながら、それを拾いだすかのように語る。柿本さんには生家である近江の三井寺を案内して頂いたことがある。

 そんな柿本さんのエッセイ集が出た。大方は京都新聞に発表したものだとか。淡々と旅のこと、人との出会いのことを綴っているが、ことさら珍しいことを語っているわけでもないが、引きこまれるような文章であるのは、ものの真髄を探ろうとする心が書かせているからだろう。

 『季の時空へ』とあるように、「きさらぎ」「椿」「たんぽぽ」「白い桜」……と発表する季節に合わせて書き綴ったことが想像できる。その中には第二次大戦という時代が投影されている。昭和3年生れの柿本さんには戦争は人生史の中でウエイトの大きい事項だと思う。

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