雨宮きぬよ第四句集『新居』 2011年8月  角川書店

  春満月水が流れてゆくやうな
  くちなしの一重の雨となりにけり
  蓮の実の飛ぶよ火星の近づけり
  猫が水飲みに来てゐる薔薇の園
  ひとりづつみんな消えたる花野かな
  ひとしきり雪の匂へる雛かな
  拾はれて涼しき貝となりにけり

句集名「新居」は作者の出生地の旧地名だという。この旧地名を日表に出したところに、すでに作者の寄せる想いがある。俳句もまた、詠み手が視線を定めたとき、そのことが作者の想いを現わすものになるのだろう。それは絵画でも写真でも同じである。春満月のもとの水、雨の中のくちなしの花へ、蓮の実の飛ぶ彼方へ想いを馳せたときに作品となる。

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