又三郎いまも晩夏の山にをり
腰に巻くセーター海は海のまま
大南風鱗はがれてゆくやうな
花南瓜子どもは風を連れてくる
朝空のすでにおほぞらいぬふぐり
大ホールに座つてゐたる海の日よ
みづうみもしろがねなせり花芒
第一句集で俳人協会新人賞を受賞した俳人の第二句集。「わたしは自然も風景も社会も現代も上手に詠えない。詠えるのは私の人生だけである。」とあとがきに書いていることで、作者の覚悟のようなもの、作者の視点の在り処が見えてくる。
ページを繰るたびたえず駘蕩とした風が流れているように感じるのは、作者が海に近い横須賀に住んでいるせいかもしれない。手堅い作品群である。