安住敦を読む会

以前「石鼎」句集を読むからと、お誘いを受けたことのある「銀漢亭」での定例会。今回は「安住敦」を読む、ということで出掛けた。というのは、「安住敦」ということで、「春燈」の前主宰もお見えになるということで、「ににん」10周年に出席して下さったお礼も言いたいと思っていたのだ。

テキストはふらんす堂の文庫本『安住敦』句集。いつものように20句選とワースト5句を持ち寄っての会。安住敦のように人口に膾炙された作品群から選ぶのは非常に難しい。名句中の名句ともなっている「しぐるるや駅に西口東口」はやはり人気句であった。選は年代でも違ってくる。ランプを売るなどという風景は現在では骨董市くらいしか現実感がないし、山羊のいる風景なども昭和20年代は日常によく見かける風景だったが、若い人には非日常の風景だ。。

柿の木坂だより  岩淵喜代子選
銀杏ちる兄が駈ければ妹も
春の驟雨たまたま妻と町にあれば
しぐるるや駅に西口東口
籐椅子に友若ければその妻も
きりきりと日が落ちてゆく胡桃割る
ランプ売るひとつランプを霧にともし
降誕祭町に降る雪わが家にも
昼の月あはれいろなき祭かな
冬の虹消えむとしたるとき気づく
秋の海見て来し下駄を脱ぎちらし
子に蒔かせたる花種の名を忘れ
緑陰にして乞はれたる煙草の火
舞ふ獅子にはなれて笛を吹きにけり
籐椅子を立ちて来し用忘れけり
麦秋のしんかんたるに耐へゐたる
極月のくらやみに山羊鳴きにけり
涅槃図に束の間ありし夕日かな
秋風や家鴨は家鴨どちかたまり
こほろぎの昼は遊べり石の上
しんかんとあめつちはあり寒牡丹

逆選
くちすへばほほづきありぬあはれあはれ
啄木忌いくたび職を替へてもや
秋風のわが身ひとつの句なりけり
水仙の枯れゆく花にしたがふ葉
鳥帰るいづこの空もさびしからむに

逆選の持ち寄った5句はかなりぶれがあった。それは、選ぶ人の選句眼というより、逆選の選び方でる。逆選は一番悪い句というよりは、有名だが自分はいいと思えない句なども入るからだ。だが、問題になったのは、その文庫本はーー代表作を網羅し精選350句を収録ーーと書いてあることだ。たとえば「みごもりしことはまことか4月馬鹿」「冷まじきものに東司の糞壺よ」「老いざまはとまれ生きざま年初め」などの作品である。

逆選として抽出しなかった人も、そんなのは問題にする気も無い駄句として無視してしまったという意見に纏まった。要するに350句に入れなくてもいいではないかということだ。

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