2012年9月10日 のアーカイブ

峯尾文世第二句集『街のさざなみ』2012年9月  ふらんす堂

2012年9月10日 月曜日

帯・中原道夫
栞・大輪靖宏

靴下を干せば枯野に続くかな
日月や名もなき雲を乗する湖
ふるさとに水平線のある淑氣
鳥交る親のやうなる静かな木
ほんとうのやみとはこんな鹿のこゑ
夕鐘の色しみわたる夏座敷
ふところのふとこのごろの秋の風

第一句集以後の十年間が一集に収められているという。この十年という区切りは句集を編むのに適した歳月である。成熟の度を深めた峰尾文世さんの作品がそのことを、最も物語っているとおもう。靴下を干しても干さなくっても、枯野はそこにあるのかもしれない。しかし、ここには靴下を干しながら枯野へ近づいてゆく作者がいるのだ。何気ない日常も意識すれば特別な世界になることを教えてくれる一句である。

津川絵里子第二句集『はじまりの樹』 2012年8月 ふらんす堂

2012年9月10日 月曜日

帯文 山上樹実雄

笹鳴や亡き人に来る誕生日
日向ぼこ大樹の影が触れてくる
ビール飲む奥の座敷に詰み込まれ
池の水しづかにあふれ蓮の花
カーテンの襞から子ども冬日和
座布団のすべりの良さよ桜咲く

いずれも日常の風景であるにもかかわらず、非常に静寂な世界が繰り拡げられた。それは多分、作者の透徹した視野が生み出した世界なのだと思う。

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