帯・中原道夫
栞・大輪靖宏
靴下を干せば枯野に続くかな
日月や名もなき雲を乗する湖
ふるさとに水平線のある淑氣
鳥交る親のやうなる静かな木
ほんとうのやみとはこんな鹿のこゑ
夕鐘の色しみわたる夏座敷
ふところのふとこのごろの秋の風
第一句集以後の十年間が一集に収められているという。この十年という区切りは句集を編むのに適した歳月である。成熟の度を深めた峰尾文世さんの作品がそのことを、最も物語っているとおもう。靴下を干しても干さなくっても、枯野はそこにあるのかもしれない。しかし、ここには靴下を干しながら枯野へ近づいてゆく作者がいるのだ。何気ない日常も意識すれば特別な世界になることを教えてくれる一句である。