2011年8月 のアーカイブ

夏石番矢選句集『ターコイズ・ミルク』 2011年刊  

2011年8月4日 木曜日

日本語からの500句という言葉が付け加えられているのは、世界俳句協会を立ち上げ、国際的な交流をし、自らが年に幾度も海外へ出る生活が背景にあるからであろう。そうした夏石氏の俳句表現は、例えれば何というべきなのか。

  老婆と鳩と風と噂が集まる広場
  父と子のあいだの山・川・火の港

こうした俳句は中では分かる俳句、というべきだろう。だが分かる俳句と言うのは予定調和的な範囲にとどまることになる。

  水仙や怒涛の国は死者の国
  巨人のため息ときどき届く空飛ぶ法王

この飛躍、あるいは断定をシュールリアリズムと片付けるには理が勝ち過ぎているように思えるのだが、とにかく意欲的である。ここでは気分とか詩情とか情緒とかを廃棄して、これから向かう世界を先取りしているように思える。

原 雅子第二句集『束の間』 2011年 角川書店

2011年8月4日 木曜日

  大勢の寒がつてゐる磯遊び
ことにこの感覚は早春の海辺の寒さの中にいる人々を網羅して諧謔へ繋げている。

 そここに布団を踏んで山の家
 ふらふらと点く街燈や雪の昼
 灯台を涼しき棒につばくらめ
 満月や船はとつくに着いてゐし
 どこからも見ゆる火の見の寒さうな
 このごろの涼しさに置く眼鏡かな
 地図に在る泉はみどり誰もゆかず
 にほどりにたのしき水の隙間かな
 水鳥のしづかに混んできたるなり

ひとことで言えば、誠実さと精密さを感じる句集である。切り取られた風景は決して特異な場面ではない。誰もが共有している場面で、誰もが感じている景なのである。それが作者の手にかかると、きちんと輪郭が築構されて完成するのである。

小澤實主宰『澤』平成23年8月 創刊十一周年記念号

2011年8月4日 木曜日

創刊十一周年記念号は永田耕衣を特集した分厚い一冊である。何故永田耕衣なのかは、頁を繰ってすぐに解った。『澤』主宰の特別親交のあった作家だったのだ。グラビアとして無数の耕衣のハガキが転載されている。多分表紙のデザインとして「澤」という文字が置かれているが、それも永田耕衣の筆になるものなのだろう。とにかく貴重な一冊である。それと、さまざな内外の論者による耕衣論。それは愉しさも加わりながら読み進んだ。最後に鹿火屋に収録されていた俳句一覧が付されている。

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