原 雅子第二句集『束の間』 2011年 角川書店

  大勢の寒がつてゐる磯遊び
ことにこの感覚は早春の海辺の寒さの中にいる人々を網羅して諧謔へ繋げている。

 そここに布団を踏んで山の家
 ふらふらと点く街燈や雪の昼
 灯台を涼しき棒につばくらめ
 満月や船はとつくに着いてゐし
 どこからも見ゆる火の見の寒さうな
 このごろの涼しさに置く眼鏡かな
 地図に在る泉はみどり誰もゆかず
 にほどりにたのしき水の隙間かな
 水鳥のしづかに混んできたるなり

ひとことで言えば、誠実さと精密さを感じる句集である。切り取られた風景は決して特異な場面ではない。誰もが共有している場面で、誰もが感じている景なのである。それが作者の手にかかると、きちんと輪郭が築構されて完成するのである。

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