2010年11月 のアーカイブ

物語を詠む

2010年11月10日 水曜日

「ににん」41号は10周年特集号。今回は「物語を詠む」特集となる。こうした企画は賛否両論がある。要するに写生を基本とする俳句に反するということだろう。しかし、われわれは同人誌である。結社は研鑽が優先するが、同人誌は試みを優先させたい。

「物語を詠む」は自分で選んだ小説の舞台を実際に、あるいは机上で彷徨しながらの作句である。その小説の空気を呼び込みながら、自分の想像力を増幅させることになる。実際には、その小説に描かれた土地を歩くことが多い。旅をするときに、その土地を舞台にした小説を先に見つけておくこともある。これは案外と、旅も俳句も面白くなって、相乗効果を生む。

庄野頼子の「タイムスリップ・コンビナート」は勿論実際の舞台の鶴見線の海芝浦駅までの小さな旅だ。黒井千次の「たまらん坂」は国分寺近くにあって、今も坂の由来が書かれた案内板がある。だが、そうした土地を辿れない小説もたくさんある。その時は、その小説の舞台になりそうなところを探して歩く、というのも面白い。たとえば高橋たか子の「ロンリー・ウーマン」は渡良瀬遊水地の葦焼の風景を重ねた。

なぜ小説なのか、といえば旅と重ねることの楽しさだ。しかし、それだけではない。現在「ににん」に碧梧桐を書いている正津勉氏が中心になった読書会が10年になる。高田馬場の地域センター内で行われているので、興味のある方は覗きに来るのも歓迎する。

一番新しい読書は泉鏡花の『天守物語』である。この会で書いてある中の理解出来ない部分を誰かが解読して納得することが多々ある。今回は討手に追われた図書乃介と夫人が「切腹はいけません。ああ是非もない。それでは私が御介錯、舌を噛切ってあげましょう」という箇所で、舌を噛み切って、という情景を想像できなかったが、中の一人が抱擁の場面なのだという。それも男の舌が夫人の口の中なのだと言う意見で納得したものは多かった。

とにかく小説は面白い。さらにその面白さを倍増してくれるのがこの読書会である。

文化の日のこと

2010年11月3日 水曜日

一人暮らしをしている弟の誕生日にかこつけて、夕食は外で食べることになった。誕生日と言っても60歳を過ぎた弟と、その兄である弟夫婦と我々夫婦という老人グループの食事会だ。

川越街道は上りも下りも渋滞していた。文化の日の今日は最後の紅葉見物の時期である。丁度帰り組みの車に巻き込まれてしまったようだ。30キロほど離れている富士見野までに随分時間がかかってしまった。

「朝は7時に目覚ましを掛けとくんだ」
とひとり暮らしの弟が言う。
「どうして、目覚ましなんか掛けんの」
「いーじゃないか、きちんとしたほうが」

と上の弟がホローする。
寝たいときに寝て、起きたいときに起きる私が目ざましを掛けるのは早朝に出かける用事があるときだけである。だから、何の用事もない定年の男が目ざましを掛けて、規則正しく生活を律する生き方はなんとなく理解し難い。

予約した時間を大幅に遅れて食事のテーブルを囲んでいたら、どこかの席を囲んでハッピバースデイの歌が湧いた。他にも今日が誕生日の人がいたんだ。「ひょっとして申告すれば、あんなふうにボーイさんが囲んで歌ってくれたんじゃない」とは言ったが、そこは老人意識が頭を占めていて、名乗るほどのことではないと言うことになった。

帰り道は誕生日だった弟のマンションに寄った。まだ住み始めたばかりのマンションなので珍しさもあって、みんなでぞろぞろ8階の部屋まで立ち寄った。

目ざましを掛けて規則正しい生活をする割には汚い台所だ。家事などやったことのない上の弟が「おい、少しシンクを磨いたほうがいいぜ」というのも可笑しい。
「うん」と弟も素直にうなずている。

一人だから、寝室、食事、絵を描く部屋が全部別々にあるので部屋はそこそこ整頓されていた。窓からの眺めは8階のこの建物より高いところな無いらしくて、灯の街が半円形に見渡せた。どこかの海辺のホテルで海の半円形を見たのを思い出した。

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