大木あまり第五句集『星涼』 2010年9月 ふらんす堂

煮くづれの小魚九月十一日
すいつちよに灯さぬ部屋の人形かな
野遊びのやうにみんなで空を見て
しみじみと汗かいてゐる夜食かな
野の蝶の触れゆくものに我も触る
照りつけて朝のはじまる稲の花
長病や春の野菜の浸しもの
逝く猫に小さきハンカチ持たせやる

力をぬいて自然に身を任せている作者の取り合わせ。それは取り合わせという観念もなく自然に見えるものを選び取る、という作り方だ。例えば「煮くずれと九月十一日のテロ」「すいつちよと人形」「長病みと野菜の浸しもの」など。

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