俳誌春秋 筆者・竹川みさ子
『ににん』二〇一六年春号 通巻六十二号代表 岩淵喜代子(埼玉県朝霞市より発行)創刊平成十二年秋、岩淵喜代子が朝霞市にて「同人誌の気概」ということを追求していきたい。と標榜。(季刊) 16年俳句年鑑
『ににん』62号はお二人の句集出版祝賀会のグラビアから始まる。浜田はるみ氏の「韻く」と山内美代子氏の「藤が丘から」で、「祝賀会風景」の記録は服部さやか氏。祝賀会参加者の「句集の一句選」より
日向ぼこ神がとなりに来て座る 浜田はるみ
水の揺れ日の揺れ風の金魚売り 山内美代子
当日出席の叶わなかった山内氏の「藤が丘から」には浜岡紀子氏と武井伸子氏の書評。「序にかえて」は岩淵喜代子代表がそれぞれの視点から、著者の明るく才能豊かで、しかもエネルギツシュなお人柄を、すっきりと飾らずに称えておられる。
墨彩画と書、俳句とエッセイが納められたという贅沢な句画集、著者は昭和四年生れという。多才にして多彩なる表現者に感服である。
俳句作品「ににん集」より 兼題「受信」
松過ぎの岬へ運ぶ受信音 岩淵喜代子
受信して朱の冴返る火山弾 川村 研治
探梅や受信感度のよき日向 佐々木靖子
覚め際に受信せる夢冬の薔薇 末永 朱胤
枇杷の花星の言葉を受信せり 鈴木まさゑ
「さぎん集」より
冬の波は海の呼吸と思ひけり 木津 直人
新春の野良着持ち出す日和かな 西方 来人
淡雪の余白に雀こぼれ来て 高橋寛治
硝子戸の向かう木の芽の騒がしく 武井伸子
深々と青空ありぬ出初式 岩淵喜代子
高橋寛治氏「定型詩の不思議」、岩淵代表「石鼎余滴」は克明に調べあげて中身の濃い連載評論である。
「雁の玉章」は六氏のエツセイ集。その中で代表は「『ににん』は誰もが気兼ねなく評論俳句を発表し続け、格闘する場としたい」と「同人誌の気概」が充分感じ取れる俳誌である。