『六曜』2015年41号から 

『575の散歩路』寄贈誌を読んで
筆者・佐藤冨美子

「俳句ににん」2015年 夏号59
(ににん発行所・埼玉県朝霞市 代表 岩淵喜代子氏)

まず表紙裏のページ、本佐梨乃氏の「英訳版 奥の細道を読む」白河の関の「day after day hadpassed vague uneasinessー 心許なき日かず重なるままに―」は刺激的だ。
岩淵代表の「鬣賞」受賞ので一冊の「鹿火屋」―原石鼎の憧憬」の書評(水野真由美氏「俳句史の地平」鬣TATEGANI155号転載記事)、また「石鼎余滴三 鈴木芳如」には、石鼎ゆかりの人々が登場する。連載評論とエッセイなど味い深い。

ににん集兼題 「正座」より。以下の六句が印象に残った。

幼子の正座の膝や春の風    大豆生田伴子
春の山町の後ろに正座せり    川村 研治
若葉さわぐ正座のできぬ闇ばかり 木津 直人
正座せずでんぐりかへる海月かな 高橋 寛治
夕暮れて正座を崩す花氷     服部さやか
正座より解き放たれて青き踏む  浜岡 紀子
八月の雲は動かずただ真白    小塩 正子

平明な言葉で詠まれ「八月」と限定している。雲は風で流されるものだが「雲は動かず」と、雲に主体性を持たせ「ただ真白」と結び詠んでいる。この「ただ」が句の重量感を増し、作者の深い想いを表しているようだ。

しやらしやらと夕風に乗る小判草    石井 圭子

小判型の小穂を一、二個ぶら下げて咲くという小判草。「しやらしやら」と風と触れ合う音が、やや古風で軽く涼しげだ。夕風に乗ってどこまでいくのだろう。夕暮れを惜しむかのようだが、明日へと続く風だ。繊細な感じの中七と、存在感のある在五の名詞止め。リズム感とバランスが心地よい。

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