糸滝のひと筋ごとに風生れ    葵 瓔子

糸滝というから、糸のような細い流れが寄り集まって滝を成している繊細なものなのだろう。そのひと筋ひと筋を見詰めていると、それぞれが微かに揺れている。滝の落下する勢いに自らの滝ごとに揺れているのだ。それだけのことだが、(ひと筋ごとに)の措辞から作者が滝へ、あるいは滝が作者へ一気に近づいてきた。

俳句は凝視から生れるものである。まさにこの一句は滝と真正面から向かい合うことで成したもの。他に(枯野人船出のごとく沖めざし)(寂しさにこぼす霜夜の砂時計)(百歳の帯を鳴かせて着衣始)など、対象に向かい合う作者が見えてくる作品が多い。第二句集『水明』 2014月8月 序句・上田日差子  跋・今野好江

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