一書は第一部の句集と第二部の文章に分かれている。
まずはまえがきが筑紫さんらしい。
最初にF・フォイエルバッハの『唯心論と唯物論』の抜粋を置いて、人は老いてゆく条理の中で、自分の意志がある。そうして自分の本質の自覚こそが生きること、と言っているのだろう。
阿部定にしぐれ花やぐ昭和かな
ばらばらの顔であひたき同窓会
欲望が輝いてゐた戦後とは
余生とはうかつにすごす末期かな
老人が群れてかごめや十二月
当然ながら無季俳句がおおいので、選ぶときにどうしても内容に気を取られてしまうが、全体に、今回の文章と俳句作品を合せて、人生、ことに老いることに焦点があったている
。実際にお目に掛かっているときの印象のまま、本来的に生真面目な真摯な人なのだと思う。