長嶺千晶句集『雁の雫』   2013年   文学の森

昼さがり遠くの水へ落椿
竹秋のまばゆさをふと疎みけり
島影に島影重ね青簾
振り上げし鋏下ろせず蟹と蟹
竹咲くや平家納経銀乾く
眺めやる青田に誰も居らずなり
水音の落ちゆく先へ蛍かな
ごちやごちやと鴨や家鴨や橋の下
緑陰に憩へば旅にあるごとし
人日や老いゆくことを知恵はじめ
揺らぎつつ列を保てり雁の群

まことに端正な作品集である。作品が人格を、あるいは作品が人生を重ねるということなのか。いずれにしても間違いなく作者の視点を書き表したものなのだろう。

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