1959年生れ。結社「出航」所属。
一集は、きわめて透明な世界が掬い取られている。というよりは金子氏が掬い取る風景は透明になる、と言ったほうが正確である。平明なことばで紡がれている作品群は、明るい淡彩画を想わせる心地よい風景である。それは作者の現在身を置いている環境への賛辞でもあるのではないかと思った。
囀りやくるりくるりと試し書き
すぐそこに春の海見ゆオムライス
少しづつ粘土が象になる日永
待たされてたんぽぽの絮吹いてをり
月の舟の乗船券を渡さるる
仏壇に白桃ひとつ灯りけり
月光がピアノの蓋を開けたがる
それはもう大きな栗のモンブラン
次の四句は句集巻末に近いあたりの見開きの四句。いずれもが喧騒が静寂に反転したあたりの空気を捉えている。このあたりに金子氏の透明になる視点の秘密がありそうである。
冬ざれやペットボトルの凹凸も
ガードレールに凭れてゐたる焼薯屋
影踏みの子のゐなくなる返り花
とほき日のさらに遠くに冬夕焼
岩淵様
お心のこもった鑑賞文を書いていただき、
どうもありがとうございます!
「金子氏が掬い取る風景は透明になる」と、
おっしゃっていただき、とても光栄です。
今後の句作の上での、大きな励みとなります。
これからも、よろしくご交誼のほど、
お願い申し上げます。