河野邦子第三句集『急須』 2012年4月  ふらんす堂

結社『浮野』の編集に携わってからでも30年と、あとがきにある。その年月の重みが河野氏の俳句の骨法になっている。もう俳句という形もゆるがない。そう思えるのが

ひよどりをあいつと呼んでみたりする
雪渓を母に説明してきたる
朱鷺草のあるはず浮野うかぶはず

「ひよどり」の句の座語の据え方、「雪渓」の叙述の方法、そうして「朱鷺草」の句の把握の間の取り方、すべてに年月の積み重ねを感じる。以下の句にある平常心も見事。改めてその句集名『急須』を想った。

学校のプールに蛇の泳ぎけり
冬帽子役場の門を過ぎて海
白芙蓉この世に未練なきごとく
瀬戸の島買いたきほどの島の数

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