りんりんと冬の木立に腕拡げ   九里順子

前書きに「高村光太郎」とある。
この句のある章は「続・近代詩漫歩」というタイトルが置かれ、一句ごとに文学者の名前が付されている。

三多磨の百合にとどまる七年の時  (北村透谷)
梅の闇姉妹の中を川流れ  (島崎藤村)
花蔭に男子も袖を濡らすべし  (田山花袋)

と、こんな感じであるが、どの句もその前書きが無くても、印象的な絵画として爽やかである。さらに前書きによって、一句のイメージが奥深くなっている。例えば冒頭の句が、高村光太郎であることによって、智惠子の青空が重なり、光太郎の彫刻のような木立が見えて来る。面白い試みである。
九里順子第二句集『風景』 2016年 邑書林

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