視野に妻在りて夕日のさるすべり  奈良文夫

愛妻句集というのとも違う。しかし、やはり隋所にある妻を詠んだ句の中に作者が存在する。(妻と来て昔の岩に春惜しむ)(匙持てばむかしの二人掻氷)など。淡々と風景の中に同化させた妻が淡彩画のようだ。

掲出句も、淡々とした描き方ではあるが、夕日の中の妻、夕日の中のさるすべり、そのどちらをも同質の風景のひとつとして置いているのが印象的だ。(奈良文夫第六句集『急磴』  2016年 ウエップ)より。他に(空蝉を胸にすがらせ帰りけり)など。

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