『太陽』主宰・務中昌己
ーー秀句の窓ーー 筆者・高下なおこ
「俳句四季」3月号 巻頭句より。 初午は二月の最初の午の日に全国の稲荷神社や稲荷の祠で行われる祭。もともと春の農事を始める前の豊年祈願の祭であったらしく、この日は仕事を休んで神棚に油揚げや初午団子を供えたりしたようだ。
掲句の舞台は、稲荷神社の祭りの刃物の出店での景だろうか。ずらりと並べられた刃物が空が映るほど研ぎ澄まされて、春の陽射しに冷たい光を放っている様が見える。
一方、田舎の初午だとすれば、春の農作業の始まりに備えて鎌や鋏などを研いでいるのかも知れない。いずれにしても、季語初午が見事な取り合わせとなっている。